創作童話
11.周りのものすべてが教材
皆さんは、日常生活を普通に送れるような知識や知恵を、いったいどうやって
身に付けたのだろうと不思議に思うことはありませんか? 恐らく学校で
学んだことの何倍もの知識や知恵を乳幼児期に身に付けたのだと思います。
4~5歳の子どもは、もうすでに多くのことを知っているからです。
耳に聞こえる人の声、テレビや電話や時計の音、外から聞こえる車や
サイレンの音、鳥の囀り、雨や風の音、大きい音や小さい音、高い音や低い音、
それらを聞き分けられます。
目に触れる、人の顔、天井やカーテン、おもちゃや絵本、洋服や靴、木やお花、
太陽や月、食べ物、飲み物、それらを認識できます。
鼻ににおう、お父さんとお母さんの匂い、食べ物や飲み物の匂い、お花の匂い、
いい匂いや嫌な臭い、それらを嗅ぎ分けられます。
肌に触れる、お父さん、お母さんの肌や手、お布団や毛布、お湯やお水、
柔らかいものや固いもの、熱いものや冷たいもの、尖ったものや丸いもの、
ツルツルしたものやザラザラしたもの、それらの感触を知っています。
口で味わう、甘いものや苦いもの、酸っぱいものや辛いもの、柔らかいものや
固いもの、パサパサしたものやネバネバしたもの、好きな味と嫌いな味、
それらを味わえます。
これらのことは、生まれる前から脳にインプットされていたのでしょうか?
決してそうではありません。 今、お母さん達が何気なく話している言葉や
取っている行動のすべては、乳幼児期の経験から学んだのです。
言葉を理解し、言葉を発し、やがて、すべてのものに名前があることを知り、
覚えていきます。 でも、単語一つ覚えることさえ、決してたやすいことでは
ないということは、外国語を学習するとわかります。
それに加えて、その色やにおい、感触なども同時に覚えていくのです。
その時には、見て(視覚)、聞いて(聴覚)、嗅いで(嗅覚)、触って(触覚)、
味わう(味覚)という五感をフルに活動させているわけです。
さらに、子どもは周りで起こる様々な出来事から、何をすべきか、
何をしてはいけないか、何が危険なのかを学んでいくのです。
子どもが乳幼児期に身につける情報量は想像すらできません。
子どもにとっては、周りにあるものや出来事のすべてが、
生きていくために学ぶべきことの、重要な教材となるのです。