創作童話
1.ぼくは生まれて1ヶ月
ぼくはね、お母さんのおなかの中にいる時から、耳はよく聞こえたんだよ。
お母さんとお父さんの声は、おなかの中でいつも聞いていたから、わかっていたよ。
この世に出てきてビックリしたんだけど、ずいぶんいろいろな音があるんだね。
お水の中で聞くのと全然違うよ。
正直言うとね、ぼくはまだ、一度にたくさんの音を聞けないんだ。 だから、周りがうるさいと一番大切な音も聞こえなくなるんだ。
だから、しばらくは、テレビとかラジオとかを大きな音でかけないでくれる?
ぼくは、今は静かな環境のほうが好きだよ。 静かだと、お母さんの声もよく聞こえるし、お母さんが動いている気配がわかるから、楽しいんだ。 何をしているかはわからないけど、お母さんが楽しそうに鼻歌を歌っていると、ぼくまで楽しくなる。 お母さんが何かをしてたてる音、トントントンとかバシャバシャとかシュッシュッとかいう音も大好きなんだよ。
まだね、目はあんまり見えないんだ。 ぼくの顔の近くに来てくれたら、なんとなくわかるんだけどね。 でもね、ぼんやりだけど、お父さんやお母さんが面白い顔をしたり、笑ったりしているのはわかるんだよ。 ぼくも時々まねをして顔を動かしてみようと思うんだけど、なかなかうまくいかない。「クーッ、むずかしい!」
ぼくは、周りの音を一生懸命聞いたり、ぼくの顔の近くにくるものを、一生懸命観察しているんだよ。 でもね、ぼくが一番好きなもの何だと思う? それはね、お母さんが歌ってくれる子守唄なんだ。 お母さんの声は100%心地いい。 お母さんが子守唄を歌ってくれると、お母さんのおなかの中を思い出すなぁ