創作童話
10.ぼくは生まれて10ヶ月
お母さんの「いないいないバー」大好き。 紙を使ったり、布を使ったり、カーテンに隠れたり、いろいろなパターンでやってくれるから、最高に面白い。
それに、お母さんがぼくの身体をお人形さんみたいに動かすのも好きなんだ。 ぼくのあんよをキックさせたり、ぼくのおててでパチパチパチと拍手させたり、熊のぬいぐるみと握手させたりね。 こんなことができるようになるなら、がんばって早く大きくなりたい。
ところでね、ぼくずっと気になって、お母さんに謝りたいと思っていることがあるの
それはね、生まれてからずっとだけど、ぼく夜中に泣くでしょ。 だから、お母さんは夜眠れない。 お母さんがどんどん痩せていってるの、ぼく気付いているよ。
ぼく、夜中にお腹がすくことはなくなったんだけどね。 ぼくにもよくわからないんだけど、おめめ閉じて真っ暗な世界にいると、お母さんが消えてしまって、おめめ開けてもいないんじゃないかって不安になるの。
お母さんのお腹の中にいる時は、不安なんてなかったんだよ。 ぼくは、安全な場所でしっかり守られているって100%確信があったからね。
でも、この世界は広いよ。 ぼくの身体を包み込んでくれる安全な袋がないから、どこかへ飛んで行ってしまいそうな気がする。 だから、お母さんがそばにいるか確かめたくて泣くこともあるんだ。
それから、昼間に見たこと、聞いたことがいっぱいあり過ぎて、それが頭の中でぐるぐる回るんだ。 頭からあふれ出しそうで「たいへんだー」ってパニックになっちゃうこともあるの。
「暑いよ」「寒いよ」って言いたくて泣くこともあるし、身体が変で泣くこともあるんだ。
お母さん、夜中に起こして本当にごめんね。
ぼくもがんばるからもう少し我慢してね。